最近話題の「178万円の壁」。でも「178万円まで稼いでも扶養に入れる」と思っている方、ちょっと待ってください。実はこれ、大きな誤解なんです。
結論から言うと…
178万円の壁は「所得税」の話であり、「社会保険の扶養」とは別の話です。
つまり、178万円まで稼いでも旦那さんの社会保険の扶養に入れるわけではありません。
そもそも「178万円の壁」って何?
2024年の衆議院選挙で国民民主党が掲げた政策が発端です。
1995年に「103万円の壁」が設定された当時、最低賃金は時給611円でした。2024年には最低賃金が1,055円と約1.73倍に上昇。そこで、103万円×1.73倍=178万円に引き上げるべきだという主張です。
この「178万円の壁」は、所得税がかからない年収の上限を引き上げようという議論なのです。
2025年現在の状況
2025年の税制改正で決まったのは以下の内容です。
- 所得税の非課税ライン:103万円 → 最大160万円へ引き上げ
- 基礎控除:48万円 → 58万円
- 給与所得控除の最低額:55万円 → 65万円
- 178万円への引き上げ:自民・公明・国民民主の3党で「引き続き目指す」と合意。継続協議中
「年収の壁」は1つじゃない!
ここが最も重要なポイントです。年収の壁には税金の壁と社会保険の壁があります。
税金の壁(所得税関連)
| 壁の種類 | 何が起きる? | 2025年の変更 |
|---|---|---|
| 103万円の壁 | 所得税が発生する | → 160万円に引き上げ |
| 123万円の壁 | 配偶者の扶養控除から外れる | 新設 |
| 160万円の壁 | 配偶者特別控除が満額から減額開始 | 150万円→160万円へ |
社会保険の壁(健康保険・年金関連)
| 壁の種類 | 何が起きる? | 2025年の変更 |
|---|---|---|
| 106万円の壁 | 勤務先の社会保険に加入義務(条件あり) | 変更なし |
| 130万円の壁 | 配偶者の社会保険の扶養から外れる | 変更なし |
なぜ178万円まで稼いでも扶養に入れないのか?
178万円の議論は所得税の非課税ラインの話です。
一方、配偶者(旦那さん)の社会保険の扶養に入れるかどうかは、別の基準で決まります。
社会保険の扶養条件(130万円の壁)
年収130万円を超えると、旦那さんの健康保険・年金の扶養から外れます。この基準は2025年現在、変更されていません。
つまり、仮に所得税の壁が178万円に引き上げられても…
- 年収130万円を超えた時点で、自分で国民健康保険・国民年金に加入する必要がある
- または勤務先の社会保険(106万円の壁の条件に該当する場合)に加入する必要がある
所得税は払わなくて済んでも、社会保険料の負担は発生する可能性があるのです。
106万円の壁とは?
従業員51人以上の企業で以下の条件をすべて満たすと、勤務先の社会保険に加入義務が発生します。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円)
- 2ヶ月を超えて働く予定がある
- 学生ではない
この106万円の壁も、2025年現在は変更されていません。
※注意:2026年〜2028年頃に「月額8.8万円以上」の要件が撤廃される予定です。
結局、扶養内で働くならいくらまで?
配偶者の社会保険の扶養に入りたい場合
| 勤務先の規模 | 年収の目安 |
|---|---|
| 従業員51人以上の企業 | 106万円未満 |
| 従業員50人以下の企業 | 130万円未満 |
所得税を払いたくない場合
- 2025年以降:年収160万円未満(条件により異なる)
まとめ
「178万円の壁」について整理すると…
- 178万円の壁は所得税の話。社会保険の扶養とは別問題
- 社会保険の扶養に入りたいなら、106万円または130万円の壁を意識する必要がある
- 2025年現在、社会保険の壁は変更されていない
- 所得税は払わなくて済んでも、社会保険料の負担が発生する可能性がある
「178万円まで稼いでも扶養に入れる」は誤解です。働き方を考える際は、税金と社会保険の両方の壁を理解することが大切です。
※この記事の内容は2025年12月時点の情報です。制度は今後変更される可能性がありますので、最新情報をご確認ください。
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